退学率再び

教職員の危機感薄く

 関西のある私立大学職員からメールが入った。「大学の実力」調査を機に、従来“タブー”とされていた退学率が学内で話題に上るようになったものの、「他大学に比べて多いか少ないかだけ。問題意識や危機感はない」と書いていた。

 同大の1年間の退学率は数%だが、実数では300人超、4年間で1200人を超す。それでも「うちの大学はつぶれないから」と笑う教職員さえいるという。退学後、心の病にかかったりする人も多く、単に経営上の問題ではない。「なぜ退学したか。それを自分たちで調べ、対策を立てない限り、大学は良くならない」と職員は嘆く。

 鈴木寛・文科副大臣も「データ公開と教師力が問題解決のカギ」と強調する。長年、大学で教えてきたが、「議員との二足のわらじの自分よりひどい教員」が目についたという。退学者増は「社会益に反する」という本質的な問題を理解しない教員が少なくないのだ。

 そんな現状を破る方策に鈴木副大臣が考えているのが「毎日オープンキャンパス」だ。授業をはじめデータの裏側にある学内の日常をくまなく見せることで、見られる側の意識や行動が変わるのではないか。「国も何か支援したい」と話す。

 2人に1人が大学に進む時代が生む退学者。その1人ひとりの姿を思い浮かべるとき、「退学率」という数字は初めて、問題解決の起点として意味を持つようになる。