高校無償化の除外論浮上 朝鮮学校、教育方針は…

 「高校無償化」制度から除外すべきだ、という意見が出ている朝鮮学校中井洽拉致問題担当相が対象から外すよう文部科学省側に要請し、鳩山由紀夫首相も「どんな教育をしているのかみえない」という発言を重ねている。実際はどんな学校か。

 東京都北区にある、東京朝鮮中高級学校。1946年創立の同校の生徒数は、高級部(高校)が563人、中級部(中学)が164人。朝鮮籍の生徒が若干多いものの、韓国籍の生徒もほぼ同数いる。同校は「戦後の当初は朝鮮籍だけだったが、韓国籍が後からでき、在日社会のなかで韓国籍の人たちが徐々に増えていった」。言葉、文化といった民族教育を重視して韓国籍でも子どもを通わせる保護者も少なくない。

 グラウンドには、緑色の人工芝が広がっていた。サッカー、ラグビーの公式戦会場として使われている。ラグビー部は昨年、全国大会出場をかけた都代表決定戦まで進んだ強豪だ。同校は今年度、ボクシングとラグビーで東京都のアスリート育成推進校(155高校)の一つに指定された。

 各教室では、女性の先生や女子生徒は民族衣装のチマ・チョゴリ姿。授業は朝鮮語だ。英語の授業では、先生は英語と朝鮮語で話しながら、生徒たちの机の間を回って教えていた。

 黒板の上には、故・金日成主席と金正日総書記の肖像画が並べて掲げられている。慎吉雄校長(60)によると、肖像画は、2002年までは各朝鮮学校で掲げられていたが、朝鮮籍韓国籍を問わず保護者から「抵抗がある」との声が上がり、同校では義務教育段階の中級部で外し、高級部だけ残したという。

 過去10年間の大学進学をみると、毎年200〜300人いる卒業生のうち、朝鮮大学校(東京都小平市)に進む生徒が48人〜90人。一方で日本の大学にも47人〜105人が進学し、東大や京大、早慶にも合格者を出しているという。教科書は日本の大学の受験も意識し、進学校向けの教科書を参考にしながら「中の上」のレベルを目指して独自に編集しているという。拉致問題は記載していないが、「明らかな犯罪行為だったとしっかり教えている」(慎校長)。北朝鮮のミサイル発射については「人工衛星だ」と説明しているという。

 同校には東京都の補助金が交付されており、09年度の額は約630万円。中、高級部を合わせた年間予算約4億円の1%強だ。都には財務関係書類やカリキュラム、財産変更届といった書類を提出している。慎校長は「首相は『中身が見えない』と言うが、確認にはいつでも応じる。日本の多くの人に学校を直接みてもらいたい」と話す。

 同校によると、北朝鮮本国は、日本にある朝鮮学校への資金援助や奨学金などとして、総額で年間200万ドル(約2億円)を出している。同校が受け取った額は、ここ5年間は年20万円〜10万円という。


朝鮮学校 学校教育法上は一般の小中学校、高校ではなく「各種学校」に位置づけられている。文部科学省によると、日本の幼稚園〜高校の各段階にあたる学校が全国で計73校(うち休校8校)あり、児童生徒数は約8300人。うち、高校無償化の除外論が出ている高校段階の「高級部」は11校(うち休校1校)、生徒数は約1900人。学費は、東京朝鮮中高級学校の高級部では初年度納付金は約53万円。