選択の物差し 多様性必要

情報公開

 退学率や卒業率、入試方法別の入学者数などのデータ公開を大学に義務づけるかどうかの議論が現在、中央教育審議会で行われている。

 大学選びの指標にと、文部科学相は大学設置基準に盛り込みたい考えだが、風評被害を恐れる大学側の反発などから、「年度内の改正は難しい」(徳永保・文部科学省高等教育局長)という。

 確かに大学にとっては、この情報公開は頭の痛い懸案だろう。昨年の読売新聞の「大学の実力」調査でも、入試方法別の入学者数の質問に対し、無回答・非公表が10%。「数字の独り歩きが怖い」と率直に書き添える大学もあった。

 だが大きな問題は、それでは、大学側は数字の意味を十分に説明してきたか、という点にある。背景をきちんと公表しているところは皆無に近い。

 一方、受験生や教員、保護者も同様で、数字の裏を読みとる努力はあまりうかがえない。「大学の実力」のデータをもとに生徒たちと真剣に話し合う教師がいる反面、いまだに「いかに偏差値の高い有名校に入れるかが“高校の実力”」という校長も少なくない。その結果、どんな大学かわからないまま漫然と入り、「合わない」と去っていく学生も出てくる。

 2人に1人が大学に入る時代。選択に使える物差しも多様な方がいい。それを肝に銘じ、今年も調査を行い、データを読み解いていきたい。