大学ブランド「おいしい」商品化 研究成果を食卓でアピール

各地の大学で、市場では珍しい食品や食材の研究開発が活発だ。「大学ブランド」で商品化できれば、日ごろの研究成果を分かりやすい形でPRでき、大学全入時代の学生獲得にも有利。ビジネスとしての将来展開を視野に、ある地方大学関係者は「成功したら一石何鳥、良いことずくめだ」と表情を緩める。

 「これ食べられるみたいです」。佐賀大農学部の野瀬昭博教授(60)は、学生の言葉に意表を突かれた。何年間も毎日手にしてきた研究材料だが、好んで口にしようとは考えなかったからだ。

 南アフリカ原産の植物「アイスプラント」。土壌の塩分を選択的に吸い上げて育ち、葉や茎の表面に水滴のような細胞が付いて凍ったように見えるのが名前の由来だ。野瀬教授は1999年から、この植物を使って土壌の塩害を食い止める研究に没頭してきた。

 その後、ネット上で高額売買されているのを発見し、そのままで塩味の野菜として食べられ、生薬に使われていることも分かった。あらためて試食したら「塩味とサクサク感が新鮮だった」。

 野瀬教授は“本分”の研究のかたわら商品化に取り組み、2006年に「バラフ」という名でついに発売。現在は、教え子らでつくるベンチャー企業「農研堂」が販路を開拓中だ。

 「見た目にもきれいな健康食品です」と栽培担当の小川貴啓さん(30)は売り込む。地元農家との販売契約やアイスクリームなど加工品の開発も順調という。

 今夏、全国28大学が自慢の食品を持ち寄って都内の百貨店で開いた「大学は美味(おい)しい!」フェアは、延べ約3万5000人が商品を購入する盛況ぶりだった。

 北海道大大学院の「がごめコンブ」や信州大「高峰ルビーはちみつ」には人垣ができた。山形大はプラスチックを膨らます技術を応用した米粉100%のパンを発表、世代を問わず好評を得た。

 とはいえ、大学の研究が脚光を浴び始めたのはつい最近のこと。10年、20年と研究を重ねてやっと食材として有望な品種を生み出しても、販路やノウハウが乏しく「実用化」の道のりは険しい。

 例外的なヒット商品は近畿大の「近大マグロ」だ。欧州を中心にマグロの乱獲が問題になり、国内消費を養殖で賄おうと、1970年に完全養殖の研究を始め、2002年世界で初めて成功。30年がかりの試行錯誤だったが、今や美食家をうならせるブランド魚だ。

 近畿大の水産養殖種苗センターの岡田貴彦大島事業場長(52)は「昔は稚魚から育てることは不可能と言われた。卵を産ませるのはそれ以上に難しかった」と振り返る。

 岡田事業場長は、泳ぎづめで身が締まった天然物と違い「あまり動かずたらふく餌を食べる養殖マグロの方が脂が乗っている」と笑う。出荷時は、しゃれでマグロに“卒業証書”を添えるという。

大学ブランド、いいね。

地道にまじめに研究を行っている大学教員、大学生は、いっぱいいます。また、それを支援する理事長や学長がいてこそ、このような結果が出るのであると思われる。