マイクロソフト:就職できない若者にITスキル講習 地域のNPOと連携 無料で

マイクロソフトは2010年1月から、ニートやフリーターなど、ITスキルを習得する機会を逸した若者向けに、ウィンドウズ7やオフィスソフトを提供し、就職に役立つIT能力を養う取り組みを始める。政府の「地域の若者サポートステーション」を運営するNPOと連携し、初年度は東京・立川市三鷹市、足立区、横浜市川崎市で実施。2011年は全国20カ所を公募し、計25カ所に広げる予定。

 4日、東京都内で説明会を開き発表した。マイクロソフト樋口泰行社長は「やる気があっても、就労の機会に恵まれない若者は多い。今は就職情報もネットに集約されており、ITスキルの重要性は高まっている。(マイクロソフトの)得意分野を役立てたい」と意気込みを語った。

 プログラムは、同社が運営資金、ソフトを提供し、NPO職員をIT講習の講師として養成。サポートステーションと共同で教材を開発する。ステーションでは、IT講習と就業についての相談や職場体験の機会を提供し、受講後6カ月の時点で、受講者の3割が就職するか、進路を決めて職業訓練を始めることが目標。2年間で6000人が受講することを目指す。

 NPOの一つ、「育て上げネット」(立川市)の工藤啓理事長は、同NPOが運営する立川のステーションの実情を説明。登録者1000人の2割がパソコンに触れたことがなく、5割が「ネットとメールのみ」だという。工藤理事長は「IT講習はこれまでステーションでできなかった分野。ITを使えるようになることで選択肢が広がり、自信を取り戻すことにつながる」と意義を語った。

 対象は、仕事がない15〜39歳の男女。サポートステーションで講習を受けられる。無料。本格的な稼働は来春になる見込み。
マイクロソフトのパメラ・パスマン副社長
マイクロソフトのパメラ・パスマン副社長
 ◇「日本はIT活用度が低い」 マイクロソフトのパスマン副社長

 プロジェクトの発表に合わせて来日した米マイクロソフトのパメラ・パスマン副社長に聞いた。

−−他国でも就労支援の取り組みを?

 ITスキルを身につけていない人への支援は、マイクロソフトの戦略として世界各国で実施している。受講者は国によって違い、失業率の高い米国では、失業して再就職を目指す人向け▽若年層の人口が多いブラジルでは、職につけない若者向け▽マレーシアでは女性向け−−など、ニーズに応じて提供している。

−−課題は。

 マイクロソフトには、ITスキル講習の知識、ノウハウはあるが、受講者のニーズについては状況が分からないケースがある。効果的な支援をするには、地元のコミュニティーや、雇用主との橋渡しができるNPOとの連携が不可欠だ。受講者の追跡調査も必要だと考えているが、NPOの協力が得られないと難しい。

−−習得の効果は。

 求人票には、ワープロ表計算、データベースソフトが使えるという条件が付いているケースがある。就業率を高める効果はあると考えている。就業率は、状況によって違うが、日本で実施した女性向けプログラムでは15%で、ドメスティック・バイオレンス(DV、配偶者や恋人からの暴力)の被害者ら、厳しい状況にあった受講者の就業率としては高いという評価を得た。

−−日本の状況をどのように見るか。

 ブロードバンドのインフラが整っているのに、他の先進国に比べると、IT活用度が低い。ITスキル習得への投資が少ないのではないか。若者のITスキルは、学校で身につけるべきものだと思う。私たちの目標は、就業支援が少なくて済むようになることだ。

2009年12月4日