少子化でも勝ち残る大学は? ブランドイメージ上位30の校名
日経BPコンサルティングは2009年10月に実施した「大学ブランド・イメージ調査 2010(首都圏編)」の結果をまとめ、2009年12月10日に調査結果報告書を発行・発売した。
日本の大学を取り巻く環境は、悪化の一途をたどっている。1992年をピークに18歳人口は、右肩下がりに減り続け、2009年現在、約120万人とピーク時の40%減となっている。しかし、大学の数は年々増え続けており、パイは縮小、受け皿は拡大と、ギャップが大きくなっている。来春から学生募集を停止する大学も複数校出ており、大学淘汰の激しい波が押し寄せている。そんな中、こういった状況を打破するための解決策として、大学経営の中で、大学の「ブランド力」が注目されている。そこで、日経BPコンサルティングでは、大学のブランド力を客観的に評価すべく、調査を実施した。
その結果、ブランドの総合力を表す「大学ブランド偏差値」第1位は89.3ポイントを獲得した慶應義塾大学となった(表1)。僅差での第2位が東京大学(89.1ポイント)。また第3位には早稲田大学(86.0ポイント)が続いた。
表1●【首都圏編】大学ブランド偏差値ランキング(有職者編)TOP30
大学ブランド 偏差値 ランキング |
大学種別 (国公立/私立 での順位) |
所在県 | 大学名 | 大学ブランド 偏差値 |
---|---|---|---|---|
1 | 私立(1位) | 東京都 | 慶應義塾大学 | 89.3 |
2 | 国公立(1位) | 東京都 | 東京大学 | 89.1 |
3 | 私立(2位) | 東京都 | 早稲田大学 | 86.0 |
4 | 私立(3位) | 東京都 | 上智大学 | 76.3 |
5 | 国公立(2位) | 東京都 | 一橋大学 | 73.0 |
6 | 国公立(3位) | 東京都 | 東京工業大学 | 70.3 |
7 | 私立(4位) | 東京都 | 青山学院大学 | 67.2 |
8 | 国公立(4位) | 東京都 | お茶の水女子大学 | 65.3 |
9 | 国公立(5位) | 東京都 | 東京外国語大学 | 65.1 |
10 | 私立(5位) | 東京都 | 学習院大学 | 63.9 |
10 | 私立(5位) | 東京都 | 中央大学 | 63.9 |
12 | 私立(7位) | 東京都 | 東京理科大学 | 63.6 |
12 | 私立(7位) | 東京都 | 明治大学 | 63.6 |
14 | 私立(9位) | 東京都 | 立教大学 | 62.6 |
15 | 私立(10位) | 東京都 | 津田塾大学 | 61.6 |
16 | 私立(11位) | 東京都 | 国際基督教大学 | 61.3 |
17 | 国公立(6位) | 神奈川県 | 横浜国立大学 | 61.1 |
18 | 国公立(7位) | 東京都 | 東京学芸大学 | 59.4 |
19 | 国公立(8位) | 千葉県 | 千葉大学 | 59.0 |
20 | 私立(12位) | 東京都 | 法政大学 | 58.7 |
21 | 私立(13位) | 東京都 | 日本大学 | 57.7 |
22 | 私立(14位) | 東京都 | 東海大学 | 57.6 |
23 | 私立(15位) | 神奈川県 | フェリス女学院大学 | 57.0 |
24 | 国公立(9位) | 東京都 | 東京農工大学 | 56.8 |
24 | 私立(16位) | 東京都 | 東京女子大学 | 56.8 |
26 | 私立(17位) | 東京都 | 日本女子大学 | 55.9 |
27 | 国公立(10位) | 東京都 | 電気通信大学 | 55.2 |
28 | 私立(18位) | 東京都 | 芝浦工業大学 | 54.4 |
29 | 私立(19位) | 東京都 | 東京電機大学 | 53.8 |
30 | 私立(20位) | 東京都 | 聖心女子大学 | 53.5 |
「認知率×ブランド偏差値」で5つのグループに分類、「高知名度・低ブランド力」の大学も散見
各大学を認知率と大学ブランド偏差値でプロットした結果、5段階のブランド成長フェーズがあることが確認された(図1)。最終フェーズであるブランド「成熟期」に入っている大学は17校だった。これらの大学は十分な知名度に加え、大学の「らしさ」が確立、浸透している。逆に、認知率が、平均の 75.2%をはるかに下回る「ブランド戦略の初期状態」の大学もみられ、ブランド戦略の出発点「認知・知名」に問題を抱える大学の存在も、明らかになった。しかし、大学の規模が小さい大学は、広報・宣伝活動に割く予算も限られており、マンモス校のような認知度を確立するのは骨が折れるだろう。であれば、「山椒は小粒でもピリリと辛い」を目指し、訴求ポイントを最小限度に抑え、予算をそこに集中投下することで、「競合には絶対負けない何か」を1つ作る戦術をとるべきである。「知る人ぞ知る」大学づくりへの舵取りも検討しなければならない。
さらに、大学の認知度・知名度が高く、大学名が広く知られているにも関わらず、その大学のイメージが湧かず、コアとなるブランド・イメージが想起できない、「高知名度・低ブランド力」の大学も散見された(図の3に布置するプロットの大学)。ブランド力向上のカギの1つである、大学の個性・差別性といった「どれだけ尖れるか」。この3のグループの大学は、表面的な大学名だけの認知にとどまっており、ブランド戦略の根幹である「尖ること」への成熟にまだ余地がある。
図1●【首都圏編】大学ブランド力の分布とその成長:シャチホコモデル(有職者編)
「旬な」首都大学東京、「地域産業に貢献」の東京農工大学など、大学の個性が如実に
大学認知者ベースで、各イメージ項目第1位になった大学から、その大学の特徴や「らしさ」がどの程度浸透しているかが明らかになった(表2)。例えば、「旬な」首都大学東京、「地域産業に貢献」の東京農工大学、「資格取得に積極的な」産業能率大学、「スポーツ活動に熱心に取り組む」の国士舘大学、「親しみが持てる」の明治大学が、それぞれ第1位となった。
表2●各ブランド・イメージ項目で第1位になった大学(47項目:大学認知者ベース)
表2●各ブランド・イメージ項目で第1位になった大学(47項目:大学認知者ベース)
イメージ項目 | 大学名 |
---|---|
▼一般的なイメージ | |
いま注目されている、旬である | 首都大学東京 |
エネルギッシュである | 早稲田大学 |
センスがいい、かっこいい | 青山学院大学 |
チャレンジ精神がある | 早稲田大学 |
時代を切りひらいている | 東京大学 |
一流感がある | 東京大学 |
ステータスが高い | 東京大学 |
自由闊達である | 早稲田大学 |
知名度がある | 東京大学 |
親しみが持てる | 明治大学 |
好感が持てる | 上智大学 |
誠実である、正直である | 学習院大学 |
成功している | 慶應義塾大学 |
柔軟性がある | 日本大学 |
信頼できる | 東京大学 |
▼大学(組織)に対するイメージ | |
教育機関としてのビジョンがある | 東京大学 |
広報活動に力を入れている | 東海大学 |
各界に多数の人材を輩出する | 東京大学 |
ロゴ、カラーなどが思い浮かぶ | 早稲田大学 |
学長/教授陣に魅力がある | 東京大学 |
在学中の資格取得に積極的である | 産業能率大学 |
就職状況が良い | 東京大学 |
キャンパスに活気がある | 青山学院大学 |
伝統や歴史を重んじている | 学習院大学 |
他大学にはない魅力がある | 東京大学 |
学部、学科が充実している | 東京大学/日本大学 |
研究施設が充実している | 東京大学 |
地域産業に貢献している | 東京農工大学 |
地域社会・文化に貢献している | 横浜市立大学 |
留学生の受け入れが活発である | 上智大学 |
グローバル/国際交流が活発 | 上智大学 |
スポーツ活動に熱心に取り組む | 国士舘大学 |
▼学生に対するイメージ | |
個性的である | 早稲田大学 |
勉強、研究に熱心である | 東京大学 |
意見を言える、自己主張できる | 早稲田大学 |
リーダーシップがある | 慶應義塾大学 |
集中力がある | 東京大学 |
精神的にタフである | 早稲田大学 |
礼儀正しい、上品である | 学習院大学 |
基礎学力が高い | 東京大学 |
語学に長けている | 東京外国語大学 |
存在感がある | 東京大学 |
創造力がある | 東京工業大学 |
問題解決能力が高い | 東京大学 |
高い専門性、専門知識を有する | 東京工業大学 |
面白みがある | 早稲田大学 |
コミュニケーション能力が高い | 慶應義塾大学/上智大学 |
大学ブランドは、広く世間一般からの「評判」に始まり、また受験の際には厳しい選択基準として表面化する。受験生の父母や先生からの推薦度合いや、「同偏差値校のダブル合格者」がどちらに進路を絞るかなどを左右する。大学ブランドを確立するには、それぞれの大学が、広報、宣伝活動などのコミュニケーション活動を通じて、その大学「らしさ」を上手く伝え、他大学との「差別化」をいかに図ることができるかが重要となる。そして、情報氾濫時代の今、訴求内容にプライオリティを付け、集中・集約させることにも留意が必要だ。今回の調査結果から、そのような活動がどの程度進んでいるのか、成功しているのかが、レビューできる。