患者塾:医療の疑問にやさしく答える 大学病院のかかり方/下 /福岡
「大学病院のかかり方」をテーマに11月3日に産業医科大学(北九州市八幡西区)で開催された第125回患者塾。治療行為だけではない産業医や大学病院の役割についても話が及んだ。
◇あれば助かる紹介状
小野村さん 「大学病院の先生に診てもらうのに建前では謝礼はいらないけど、本当はいるんだよ」というお尋ねが必ずあります。どうですか。
田中さん 全くいりません。1円もいりません。紹介状があれば必ず診るようにしていますし、なくても時間があれば極力診るようにしています。
谷口さん 私も「本音のところを教えて」とよく聞かれます。「先生に逆に迷惑がかかるからそういうことはしないでください」と伝えています。
田中さん 紹介状がなくても来てください。ただ紹介状があると、これまでどんな薬を飲んでいたか、医師がどんな考えで治療していたのかを、私たちはつかむことができます。かかりつけ医に言いにくければ、こそっと来てください。
<63歳の男性> 本で「○○先生」のことを知り、近くの病院の紹介状を持って大学病院に行ったところ、別の若い医師が診断しました。大学病院は希望する先生に診てもらえないのですか。
田中さん そういった場合には「あの先生にもう1回診てもらいたい」と訴えてもらえれば、もう1回診てくれるはずです。
<48歳の男性> 肺がんになって大学病院で手術を受けました。仕事をする人のための大学であり病院である産業医科大は、がんと闘っている人がどう仕事と向き合うかをもっと考えてほしい。
森さん どこまで病気と闘いながらでも働き続けるか。働くことと健康を確保することのバランスを取っていくしかありません。本人が選択するしかありませんが、慢性的な病気を持っている人と、どこまで働きどこから休むかというギリギリの線を一緒に考えるのが産業医の仕事です。がんだけでなく、今課題となっているメンタルヘルスの対策でも、できるだけ個別の対応が大切です。
松田さん 乳がんや肺がんは30〜40代が結構多く、4割ぐらいの人にうつが出てきますが、入院中に精神科的なケアを受けた人はうち2割しかいません。診療報酬上は緩和ケアが認められていますが、がん患者に、うつの治療がきちんとされていないのは今の急性期病院が反省すべき点だと思います。
どう今後を生きていくかを患者さんが一人で考えるのは酷です。いくつかの病院には患者会の事務所が院内にあり、患者さんを支えています。自分ががんになっていない医者よりも同じような経験を持つ患者さんのアドバイスの方が役に立つと思います。そんなサポートを病院はしっかりやらないといけない。
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〔福岡都市圏版〕